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非常用持ち出し袋について考える(中) ~あなたにとって、適切な非常用持ち出し袋とは?~

(上)のまとめ

 手提げ袋、ショルダーバッグ、リュックサックのそれぞれの袋について、人体に与える影響についてみてきました。

身体の一側のみに荷重が掛かる手提げ袋やショルダーバッグは、負担の程度の差こそあれ、心身に大きな負担が掛かります。それが長期に亘ると、関節の変形にも繋がってきます。子どもの場合、過大な身体的負荷がかかると、成長に影響を及ぼします。成人の場合でも、負荷を掛け続けることによって老化に影響してきます。そのため、心身の負担が比較的小さいリュックサックで荷物を運搬することがおススメという結論です。

2.どんなリュックサックが良いか?

1章で述べた通り、心身への負担が少ない携行品として、リュックサックが挙げられます。しかし、リュックサックにも種類があり、その種類や形状、使い方によっては、携行する上で心身に余分な負担が掛かる場合があります。そもそも、市販の非常用持ち出し袋(以下、非常用袋)はリュックサックタイプですが、実際のところ、心身への影響はどのくらいあるのでしょうか?

本章では、どんなリュックサックだと負担が掛かるのかについて述べ、リュックサックを選ぶ際のポイントを押さえたいと思います。

 

2-1.市販の非常用袋が心身に及ぼす影響

同じ重さの非常用袋とリュックサックを、被験者がそれぞれ背負って所定の距離を歩いた時の生理・心理的負担について比較した実験があります。

実験の結果、非常用袋の方がリュックサックに比べて歩くスピードが低下しました。また、ゆっくり歩いたにも拘らず、脈拍数は非常用袋の方が上昇しました。非常用袋を背負うことで、心理的負担も大きいことが報告されています。

非常用袋の着装感について、「安定感が悪い」と被験者全員が感じていたことも報告されています。非常用袋の問題点として、細い肩紐や身体の背面に接する部分が形態的に安定しないことが挙げられています。

安定感が悪い非常用袋を背負った状態で歩くと、安定して歩くために余分なエネルギーが割かれることになります。そのため、心身への負担が大きくなると考えられます。

 

以上のことから、非常用袋を用意する際は、安定感のあるリュックサックを選ぶのが良いと考えられます。

 

2-2.負担のかかるリュックサックとは?

それでは、どんなリュックサックだと負担が掛かるのかについて、具体的に詳しく見ていきます。

2-2-1.締め付けの強いリュックサック

身体にフィットさせるために、胸の前で留めるベルトがついたリュックサックがあります。そのリュックサックを、ベルトを締めた状態で背負うと、呼吸機能に影響を及ぼします。ベルトの締め付けによって胸郭の可動性が制限されるため、肺活量が減少し、呼吸が浅く速くなってしまいます。この状態で長時間移動すると、身体的疲労が大きくなるため、胸郭の可動性を過度に制限するような締め付けの強いリュックサックは避けた方が良いでしょう。

2-2-2.肩ベルト(肩紐)の狭いリュックサック

リュックサックを背負うと、その荷重は肩の中央を中心に、身体の前面では鎖骨~側胸部、背面では肩甲上部に掛かります。荷重は肩ベルトを通して身体に掛かるので、肩ベルトの幅が狭いと荷重が分散されず、身体への負担が大きくなります。実際、肩ベルトの幅が狭いリュックサックを背負って長時間身体を圧迫すると、生理的負担が増大するという研究報告があります。そして、生理的負担度と心理的負担度は、肩紐の圧に比例するとも報告されています。また、圧迫が強いと、神経までも圧迫して麻痺に繋がるケースもあります。

肩ベルトの幅が広いと、荷重が分散されて身体への負担が小さくなります。リュックサックを選ぶ際は、なるべく肩ベルトの幅が広いリュックサックを選ぶようにしましょう。身体になるべく圧を掛けないリュックサックを選んで下さい。また、着装する際は、肩ベルトの締めすぎに注意しましょう。

 

2-2-3.自分の体型に合わないリュックサック

背部の形状や体格といった体型の違いによって、リュックサックを背負ったときに身体に掛かる圧の程度が異なってきます。例えば、細身の人は、肩の中央に掛かる圧が大きくなります。身体への圧を小さくするため、背面や肩ベルトに衝撃吸収素材が施されているリュックサックでも、背部の形状が平らな体型の人が装着すると、肩甲骨周辺に掛かる圧が大きくなると言われています。

このように、体型によって身体に掛かる圧の位置や程度が変わってきます。身体に余分な圧を掛けないために、自分の体型に合ったリュックサックを選びましょう。

 

2-3.リュックサックを選ぶポイント

章の最後に、心身の負担を掛けないリュックサックを選ぶポイントをまとめました。リュックサックを選ぶ際に、以下3点を参考に選んでみて下さい。

 

1.締め付け過ぎないもの(特に胸周り)

2.肩ベルトの幅が広いもの

3.自分の体型に合ったもの

 

大切なことは、「身体に圧を掛け過ぎないこと」です。圧が小さすぎると、背負った時の安定性が失われるので、程良く圧を掛ける必要があります。リュックサックを選ぶ際は、実際にリュックサックを背負い、身体へのフィット感や安定感を確認しましょう。

 

一般社団法人全日本防災計画協会

黒田尚寛

阪神大震災に被災した方の話を聞くにつれて、地震のあまりに大きい被害を知りました。
また、その反面、人々が協力し合って、災害を乗り越えた話を聞き、心強さも感じました。
これから起こりうる自然災害からたくさんの人を助けたい、そう強く考えております。
その為に自分は何が出来るのか、日々模索し、鍛錬を積んでいきたいと考えております。

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