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非常食の備蓄が必要

「大きな災害が起きた際の非常食は最低3日分、一週間分を目標に備蓄しましょう」と言われています。しかし、平成29年の内閣府に調査によると「大地震に備えて食料や飲料水を準備している」と答えた人の割合は約46%でした。本当に備蓄が必要なのでしょうか?

1.なぜ食料の備蓄が必要なのか

東日本大震災や熊本地震の被災地では以下のようなことが起こりました。

東日本大震災では

・避難所に地方公共団体の食料備蓄は全体の3割程度しかなく、地震発生の日に避難所に届いた食料の多くは他の地区住民の協力による炊き出しのおにぎりだった

・避難所に自宅から食料を持参した人は2割程度で、スーパーで食料の調達ができたのは地震発生後数日経ってからだった

・食料の家庭備蓄を行なっていた家庭は少なく、地震発生日の夜は自宅にあった食料や近所の炊き出しで食事をした人もいた

 

熊本地震では

・多くのスーパーが営業中止になり、地震発生日から9日経っても約2割のスーパーが営業再開できなかった

・地震発生の翌週に近隣県の食品スーパーでは食料品などの一部が欠品や品薄になった(食料品の買いだめ、買い急ぎ、被災地域へ食料品を送るための一時的な需要の増加によるものとされている)

 

 

以下の【インフラへの影響と食料品の備蓄状況】をみると、近年の主な自然災害によるインフラへの被害状況から復旧が完了するまでに、長くて電気は約3ヶ月、水道は約6ヶ月、ガスは約2ヶ月かかっています。

次に、国の支援(支援物資)について見てみましょう。

 

 

熊本地震では

2.国の支援

災害時、国の支援として、国が支援物資を送る支援があります。

支援物資を送る支援としては「プッシュ型支援」「プル型支援」があり、平成28年の熊本地震の際には、災害発生直後は「プル型支援」が行われ、災害発生から2日後には「プッシュ型支援」、そのまた4日後には「プル型支援」が行われました。

 

プッシュ型支援とは

国が被災府県からの具体的な要請を待たずに必要と見込まれる物資を調達し、被災地に物資を緊急輸送する支援のこと。

プル型支援とは

被災府県からの具体的なニーズを聞いた上で要請があった支援物資を被災地に送ること。

3.食料供給状況(農水省)

熊本地震(4月14日発生、マグニチュード6.5、震度7)

・17日~19日までの3日間はパン、カップ麺などのカロリーを重視した支援

・20日~22日までの3日間は缶詰やレトルト食品などバリエーションを増やした支援(また、被災自治体からの要請に応じて、米、保存用パンなどを提供)

・23日~25日の3日間は、被災者のニーズに応じて、おかずとなる食品や子供・高齢者向けの食品で、保存性の高い食品を中心の支援

4月17日~25日(計204万食等) パン54万食、おにぎり23万食、パックご飯19万食、カップ麺52万食、レトルト食品14万食、 ベビーフード1万食、介護食品1万食、缶詰20万食、栄養補助食品12万食、ビスケット9万食 ほか米116t、水24万本、清涼飲料水2万本、粉ミルク(アレルギー対応含む) 2t等

4月26日以降は、保存性の高い食品を中心に被災者のニーズに合わせて必要な食品を随時提供。

大型連休中のニーズに機動的に対応できるよう、必要な食品を一定量まとめて提供

4月26日~5月6日(計59万食等) パン3万食、パックご飯11万食、カップ麺8万食、レトルト食品19万食、缶詰16万食、 栄養補助食品2万食 ほか米10t、清涼飲料水19万本、LL牛乳5万本、バナナ16万本等

※ 5月9日(月)以降は、現地での対応が困難なものについて、具体の要望に応じて個別に提供

 

 

国の支援物資として熊本地震の際には、上記【食料供給状況(農水省)】の支援が行われました。しかし、地震により物資が必ずしも計画通りにこない場合もあるでしょうし、自宅避難している方はスーパーなど、購入可能な先の営業が停止してしまえば、家にあるもので過ごすしかありません。そこで非常食の備蓄が大切になってくるのですが、非常時の食料として保存しておくのに衛生面を気にして、どうしても栄養が偏りがちになります。特に災害直後は炭水化物ばかりになりがちなので、体調不良を起こしやすくなります。

では、非常食を用意するためにはどうすれば良いのか。それは、「飽きないで、栄養の偏りを防ぐ」ものを備えておく方法です。

3.食料供給状況(農水省)
3.食料供給状況(農水省)

4.あきないで、栄養の偏りを防ぐには

あきないで、栄養の偏りを防ぐためには、「ローリングストック(日常から使用しつつ非常時にも使用できるような日持ちもする使い勝手の良い食品をストックしておき、使用したら購入する)」として備えておくことで、災害直後も栄養バランスが偏り体調不良を起こしやすい状況を防ぐことができます。

 

まず、非常食の食料(備蓄食品)を大きく2つのグループに分けて用意を考えます。

1つ目は、非常時の備えとしての使用するもの

例えば、缶パンやレスキューフーズボックスなど

2つ目は、日常から使用しつつ、非常時にも使用できるもの(ローリングストック)

レトルト食品、日持ちする野菜、缶詰、インスタント味噌汁、乾物など

 

※農林水産省の取り組みとして「家庭備蓄ポータル」というサイトで、子育て世帯や高齢者、慢性疾患やアレルギーの方がいる世帯の家庭備蓄の実践例など、役に立つ情報を公開しています。

 

5.飲み水について

水は1人あたり1日3Lの水が必要とされており、どの家庭でもストックしておく必要があります。

ストック方法として、日常的に飲んで買い足す方法や定期的に水が配達されるウォーターサーバーもおススメです。なぜなら、水道水を備蓄することは不可能ではないけれど、飲料水として使用可能なのは、塩素による消毒効果で3日程度だからです。

長期保存型の水の備蓄は、保存水と呼ばれるミネラルウォーターの賞味期限は5年~10年で通常のミネラルウォーターの2~5倍ほど長持ちします。

ここで、特に子供のいる方は、その他の飲み物(お茶など)として、水以外にも日頃から飲んでいるお茶や清涼飲料水などがあれば用意することをお勧めします。

 

6.まとめ

これまでの地震の事例から非常食の備蓄について考えました。災害がおこった時、必ずしも必要とする物資が届くとは限らない為、備蓄を日常的に行いましょう。また、普段からチョコレートや飲料水などの「持ち歩き用品」も心掛けることをお勧めします。

一般社団法人全日本防災計画協会

黒田尚寛

阪神大震災に被災した方の話を聞くにつれて、地震のあまりに大きい被害を知りました。
また、その反面、人々が協力し合って、災害を乗り越えた話を聞き、心強さも感じました。
これから起こりうる自然災害からたくさんの人を助けたい、そう強く考えております。
その為に自分は何が出来るのか、日々模索し、鍛錬を積んでいきたいと考えております。

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