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熱中症について(上)

毎年、夏になると熱中症が多発しています。平成29年5月~9月の間に5万2984人もの方が熱中症で救急搬送されました。熱中症の症状は重くなると生命へ危機が及びますが、適切な予防対策を知っていれば熱中症を防ぐことができます。こうした状況を踏まえ、熱中症の予防対処法について、集中的に普及啓発するため、政府では、平成25年から7月を「熱中症予防強化月間」と定めています。2018年に引き続き2019年も8月まで「熱中症予防強化月間」まで延長します。

1.熱中症とは何か

熱中症とは、高温・多湿な環境に身体が適応できず起こる様々な症状の総称のことです。

1-1.熱中症とは

熱中症とは、高温・多湿な環境に身体が適応できず起こる様々な症状の総称のことです。

1-2.熱中症はどのようにして起こるのか

暑い時や運動、活動などで体温が上昇したとき、外気温が高いなどの影響により身体の熱を逃しにくく体温調節機能が上手く働かなくなることや、気温が高い状態が長く続き発汗して水分が身体から減少することにより起こります。

1-3.熱中症はどれくらい起こっているのか

特に2010年以降、熱中症患者は大きく増加しており、2012~ 2016年夏期の熱中症の受診者数は29~39万人で、最も多かったのは2013年で、40万人近くいます。

1-4.熱中症と気象条件

熱中症の患者数は、高温の日数が多い年や異常に高い気温の日が出現すると増加していて、ここ数年特に2010年以降には大きく増加していることがわかります。熱中症による死亡数は、1993年以前は年平均67人ですが、1994年以降は年平均492人に増加しています。これは、夏期の気温が上昇していることと関係しているとみられます。「真夏日」とは最高気温30℃以上の日のことを指しますが、1年間の真夏日の日数が多くなると、熱中症死亡数も多くなります(図1-11)。また、夜間の最低気温が25℃以上の日数が多い年ほど熱中症死亡数が多くなります(図1-12)。

最高気温が30℃を超える辺りから熱中症による死亡が増え始め、その後気温が高くなるに連れて死亡率が急激に上昇する様子が見られます。

 

1-5.暑さ指数(WBGT):熱中症予防のための指標

暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)は、熱中症に関連する、気温、湿度、日射・輻射、風の要素を積極的に取り入れた、熱中症予防のための指標です。

 

1-5.暑さ指数(WBGT):熱中症予防のための指標

1-6.暑熱環境と暑さ指数

熱中症は日常生活、運動中、作業中等様々な場面において発生しており、年齢別に見ると中高校生では運動中、成年では作業中、高齢者では住宅で多く発生しています。日最高気温の場合以上に、熱中症死亡率との相関関係がはっきりしており、日最高暑さ指数(WBGT)が28度を超えるあたりから熱中症による死亡が増え始め、その後暑さ指数(WBGT)が高くなるに従って死亡率が急激に上昇する様子が見られます。熱中症は気温だけではなく、湿度も大きく影響することから、蒸し暑い日本では、夏季の気温上昇が進むとともに、熱中症患者の急激な増加が、近年大きな問題となっています。

 

 

2.熱中症になったときには

2-1.どんな症状があるのか

一旦、熱射病を発症すると、迅速適切な救急救命処置を行っても救命できないことがあります。

その為、熱疲労から熱射病への進展を予防することが重要です。活動強度、体調、高温等によって短い時間で発症する場合もあるので注意が必要です。

 

2-1.どんな症状があるのか

高度の脱水と循環不全により生じる熱疲労

大量の汗に追いつかない水分補給により身体が脱水状態になった場合に起こります。頭痛、吐き気、眩暈等の全身性の症状をともなうことがあり、軽度の錯乱等がみられることもあります。

 

痛みを伴う筋肉のけいれん(熱けいれん)

暑いところで大量に汗をかいた時に失われていく塩分(ナトリウム)濃度が低下したときに起こる痛みを伴う(腹部、足、腕)筋肉の痙攣です。

一過性の意識消失(失神発作)いわゆる熱失神

放熱のための皮膚血管の拡張による血圧の低下で、脳への血流が減少し血流が悪くなることで起こります。

熱射病

体から水分が減少することで、筋肉・脳・肝臓・腎臓等に十分血液が行き渡らない為に起こる症状。(1)筋肉がこむら返りを起こす。(2)意識がボーっとして意識を失う。(3)肝臓や腎臓の機能に障害が起きる。(4)また熱( 高温 ) そのものも各臓器の働きを悪化させます。

2-2.どういうときに熱中症を疑うか

気温・湿度が高い、風が弱い、日差しが強い、 照り返し・輻射熱が強い、急に暑くなった等の環境要因の際に身体の異変を感じたら熱中症疑いましょう。

尚、次のような症状が生じている場合には積極的に重症の熱中症を疑うべきでしょう。

体温が高い、全く汗をかかない、触るととても熱い 、ズキンズキンとする頭痛 、めまいや吐き気、意識の障害(応答が異常、呼びかけに反応がない等)は熱中症の危険信号です。

 

2-3.熱中症を疑ったときには何をするべきか

熱中症を疑った場合、放置すれば最悪の事態に直結する緊急事態です。重症の場合は救急車を呼ぶことはもとより、現場ですぐに体を冷やし始めてください。

するべき事は、涼しい環境への避難→脱衣と冷却→水分・塩分の補給→医療機関へ運ぶ。

 

一般社団法人全日本防災計画協会

黒田尚寛

阪神大震災に被災した方の話を聞くにつれて、地震のあまりに大きい被害を知りました。
また、その反面、人々が協力し合って、災害を乗り越えた話を聞き、心強さも感じました。
これから起こりうる自然災害からたくさんの人を助けたい、そう強く考えております。
その為に自分は何が出来るのか、日々模索し、鍛錬を積んでいきたいと考えております。

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