災害がおこって避難生活というと、避難所で過ごすイメージをもつ方が多いかと思います。知らない人と長時間過ごすのが苦痛になって車中泊を選ぶ方がいます。車の中は落ち着ける場所ではあるかもしてませんが、もともと泊まるための空間ではないので、狭く同じ姿勢で過ごすことになってしまします。そこで、問題になってくるのが、エコノミークラス症候群というものです。尚、避難所にいても同じ姿勢でいる時間が長くなってくると、エコノミークラス症候群を発症するリスクは高くなってしまいます。
エコノミークラス症候群がどうやって起こるのか、またその予防法を紹介します。
足の静脈にできた血の塊(血栓)が、血流に乗って肺まで移動して詰まるという病気です。
発症の原因とメカニズム、症状、発症のリスクが高い人について以下に詳しくみていきます。
エコノミークラス症候群が起こるメカニズムと血栓ができる原因、そして、血栓ができやすい場所について述べます。
発症については、下記の順番です。
(1)静脈の血流が滞って血栓ができる
(2)血栓が大きくなって、足の付け根までくる(深部静脈血栓症)
(3)血栓がちぎれて心臓に流れていく
(4)血栓が心臓を通り、心臓と肺をつなぐ血管(肺動脈)を通る時に血栓が詰まる(肺塞栓症)
以下の3つの状態になった時、静脈に血栓が生じやすくなります。
(1)血液の粘度が高まる
・脱水や癌などで血液の性質が変化し、濃くなってドロドロになり、固まりやすくなります。特に、経口避妊薬を服用している女性は、女性ホルモンの影響で血液が固まりやすくなっています。
(2)血液の流れが滞る
・寝たきりや長時間座って身体を動かさないでいると、血液の流れが悪くなります。妊娠中の女性は、女性ホルモンの影響で血液が固まりやすい上に、腹腔内の静脈が圧迫されて血流が悪くなります。血栓症の発症リスクが一般の人の約5倍といわれます。
(3)静脈の損傷
・手術や喫煙、糖尿病などによって血管の壁が損傷して血流が不規則になり、流れの弱いところに血栓ができやすくなります。
血栓ができやすいのは以下の静脈です。
(1)腸骨静脈(腰の辺りにある大きな静脈)
(2)大腿静脈(太ももにある大きな静脈)
(3)膝下静脈(膝の裏にある静脈)
(4)ヒラメ筋静脈(ふくらはぎにあるヒラメ筋の中にある静脈)
足の静脈で一番血栓ができやすいのはヒラメ筋静脈です。ヒラメ筋静脈の通るヒラメ筋は、筋ポンプとしての作用があります。通常であれば、筋肉で静脈を圧迫することで、足まで流れてきた血液を心臓の方へ押し戻す働きがあります。しかし、長時間不動状態が続くと筋ポンプが作用せず、血流が停滞して血栓ができやすい状態になります。
静脈の血栓が大きくなると足の付け根が腫れたり、痛みを伴うことがあります。しかし、血栓が細長く伸びながら大きくなると、足が腫れることが認め難くなります。ほとんどの場合は症状が見られず、突然の呼吸困難に陥り、突然死に繋がるケースが少なくありません。
発症しやすい人は以下の通り
(1)生活習慣病(糖尿病・高血圧・高脂血症等)のある人
(2)肥満気味の人
(3)下肢静脈瘤(足の血流が悪くなり、瘤ができる)の人
(4)過去に深部静脈血栓症・心筋梗塞・脳梗塞を発症したことのある人
(5)喫煙者
(6)がんを患っている人
(7)経口避妊薬を服用している人
(8)妊娠中もしくは出産直後の人
(9)足の手術を受けたことのある人
(10)骨折等の怪我をしている人
(11)背の低い人
(1)~(8)の人においては、血液が固まりやすくなっていたり、血流が悪くなっていることから血栓が生じやすくなります。
(9)、(10)の人は、足の手術や怪我によって血管が損傷している可能性があり、血栓が生じやすくなっている可能性があります。
(11)の人は、長時間座っていると、膝の後方にある静脈が車のシートなどに圧迫されて血流が悪くなり、血栓が生じやすいと言われています。
避難後も身体を動かそう!~エコノミークラス症候群の予防~(下)に続きます。