一般社団法人全日本防災計画協会ブログ

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食物アレルギーのある人等、食に何らかの配慮が必要な人たちの避難生活について

食物アレルギーは当事者にとっては、命に関わる問題です。アレルギーの方がいるご家庭でも備蓄しているものの、個人単位では限界があります。しかしながら、実際の災害の現場では行政の窓口が混乱し、本来あるアレルギー食が「なし」という扱いになっていたり、または避難所では混乱していてアレルギー食について呼びかけをしてもらえないといった問題が起こっていたようです。そこで、これらの事態を打開すべく動いている自治体、NPO法人を見ていきたいと思います。

1.アレルギー食に対する自治体の現状

国は東日本大震災や熊本地震で同じような事態が起きていたことを教訓に、すべての自治体に対して、避難所などにアレルギー対応食を備蓄するよう求めてきたが、備蓄体制は、自治体によって大きな差がありました。

・西日本豪雨災害では、避難所にアレルギーに対応した食品がなかったため、避難所にとどまることができず、命の危険を感じて被災した自宅に引き返した人たちがいた。

自宅にはアレルギーに対応した食品を自宅に備蓄してたが、災害9日目に底を尽き、避難所の備蓄を担当していた尾道市の部署にアレルギー対応食の提供を依頼した。

市の担当者からは「対応食が必要だという声が被災者から無かったので、特に用意していません」という返答だった。同じようにアレルギーの悩みをもつ人たちから、対応食を支援してもらうことで、なんとか乗り越えた

・広島県三原市に住む60代の男性は、避難所に行ったもののアレルギーに対応した食品が無かったことから、ほとんど食事ができず体調を崩したという。

広島県では、県内の防災倉庫に4万食余りのアレルギー対応食を備蓄し、各自治体の要請に応じて避難所などに送ることにしているが、自治体からの要請がなかったとのこと。

・北海道地震の時にも、全国から支援物資が届いたが、アレルギーに配慮したものがほとんどなかったという

・多くの自治体でも、アレルギー対応食の備蓄に課題がある可能性がある

 

2.アレルギー食に対する改善

2-1.備蓄食料見直す自治体がある

愛知県西尾市はすべての備蓄食料をアレルギー対応に変更しています。

西尾市危機管理課主事の須藤悟さんの話「アレルギー物質が入って食べられないというケースがあったとき、やっぱりその人だけ食べられないという状況があってはいけないので、平等に行き渡るということを考えますと、アレルギー対応にそろえていくことがいいと考えています」

2-2.NPO法人による炊き出しでの配慮

NPO法人「アレルギー支援ネットワーク」では、平時よりアレルギー患者やその家族が適切なアレルギーの知識を持ってもらえる活動を行っています。

同法人理事の話「東日本大震災の時も、原材料の表示はされていなくて、アレルギーの患者さんたちは食べていいかどうか困ったというSOSが届きました」。

2-3.災害に備える子供向けカード

幼い子どもは、自分のアレルギーについて説明することが難しいことから、食べ物を配る側も、アレルギーがないかどうかを確認することが大切です。

NPO法人「アレルギー支援ネットワーク」では、何にアレルギーがあるかを記すカードを作って販売しています。そのカードによって「卵」や「牛乳」、「小麦」などアレルギーがある食品に○を付けて、まわりの大人に見せれば、分かるようになっています。食物アレルギーの子どもが避難所で親とはぐれてしまった時に備えて携帯するよう呼びかけています。

 

3.まとめ

アレルギー食の備蓄は国の計画に定められているにもかかわらず、あまり進んでいない現状も見られます。これは、予算の制約もあるものの、意識の差や理解不足も原因と考えられます。アレルギーを持つ方の自助だけではなく、備蓄食料を維持管理する自治体、食料を配るNPO法人やボランティアなど幅広い方の理解こそが必要となります。

一般社団法人全日本防災計画協会

黒田尚寛

阪神大震災に被災した方の話を聞くにつれて、地震のあまりに大きい被害を知りました。
また、その反面、人々が協力し合って、災害を乗り越えた話を聞き、心強さも感じました。
これから起こりうる自然災害からたくさんの人を助けたい、そう強く考えております。
その為に自分は何が出来るのか、日々模索し、鍛錬を積んでいきたいと考えております。

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